SonTek M9 と CastAway‑CTD の統合 音速プロファイルによる音響測定の精度の向上
背景 - 音速と音響測定
水中音響測定、特に水深測定では、正確なデータを収集するために、水中の音速に関する情報が重要となります。音は、温度、塩分濃度、密度の変化に応じて、水中を伝わる速度が異なります (表 1)。たとえば、音は暖かい塩水では速く伝わり、冷たい淡水では遅く伝わります。
多くの湖、川、河口、海の水では、層状に分離し、ある層の温度は、別の層の温度とは著しく異なる場合があります (図 1)。音が水中を伝搬する際、水中のある層から次の層に移動するにつれて、屈折して方向を変えていきます。水柱全体にわたる音速と方向のこれらの変化により、音響測深に誤差が生じます。
音速補正と測深データへの適用
深さの測定誤差は、表面の水温や塩分濃度が水面下の水と大きく異なる深い河川や河口で最大になります。温度と塩分濃度が深度の計算にどのように影響するかについての詳細は、Sontek の技術ノート「音響メソッドによる距離及び速度計測の概要」を参照してください。音響流速測定システムと同様に、水路測量機器 (マルチビームエコーサウンダ、サイドスキャンソナーなど) は、音波パルスが機器から海底まで移動する時間を測定して距離を計算します。水路測量士は、音速の変動によって生じる深度測定エラーを減らすために、データに音速補正を適用します。
変化 | 音速への影響 | |
温度 | 1° C | 4.0 m/s |
塩分 | 1 PSU | 1.4 m/s |
深さ | 1 PSU | 1.7 m/s |
ADCP測定への音速補正の応用
水路測量士が水深データに音速補正を適用するのは一般的な方法ですが、ADCP データには主に 2 つの理由から補正があまり適用されていません。第 1 に、流速測定は深度測定よりも音速の影響を受けにくいことが挙げられ、流速への補正適用による高精度測定のメリットを引き出せないことがあります。
多くの環境では、音速補正によって ADCP 測定の精度がわずかに向上するだけですが、河川や海洋での高精度な流量測定に対する要件が高まり、流量や水深測定など流速以外の測定に使用される ADCP データが増えるにつれて、ADCP データに音速補正を適用する必要性が高まっています。
音速補正の重要性とADCP測定精度の向上
音速補正は、河川断面積の精度を⾼めることでADCP流量計算の精度を向上させます。ADCPトランスデューサでの正確な音速測定は、高精度な流量測定に重要です。
CastAway‑CTD と RiverSurveyor の統合
CastAway は、RiverSurveyor Live 3.0 および RiverSurveyor Stationary Live 2.0 とシームレスに統合することで、RiverSurveyor 測定に音速補正を適用するためのターンキー ソリューションを提供する、小型で高度な CTD です。CastAway を使用すると、音速プロファイルの収集が簡単になり、手動で降ろすことができ、事前プログラミングは不要で、キャスト後に自動的にデータを PC に転送します。内蔵 GPS は音速プロファイルの位置とタイムスタンプをマークし、ソフトウェアがどのプロファイルを流量計算に適用するかを自動的に選択できるようにします。ソフトウェアには、CTD からの温度、塩分、音速情報を表示する概要ページもあります (図 2)。
移動ボートで活用するソフトウェアは、ADCP トランセクト プロットに CTD プロファイルの位置のマーカーも追加します (図 3)。
総括
CTD 測定を使用して ADCP データに音速補正を適用すると、ADCP 測定の精度をさらに向上できます。断面積の大きい河川や河口などの成層化が進んだ地域での ADCP 流量測定では、音速補正が最も効果的です。CastAway の高速応答サーミスタは、すべての速度測定に必要な正確な温度データも保証します。 CastAway-CTD と RiverSurveyor の統合は、ADCP 測定に音速補正を適用し、ADCP 測定の精度を向上させるユーザーフレンドリーな方法です。